皆様こんにちは、こんばんは。
『モバイルバッテリー』って結構長い名前なのに、いまだにしっくりくる略称が無いのは陰でなにか大きな力が動いてるとしか思えないですよね。
さて本日は、
『基本的なソースヴァンルージュの作り方と美味しく作るポイント』
をご紹介します。
ソースヴァンルージュは直訳すると『赤ワインのソース』という意味で、赤ワインをベースにフォンドヴォーなどの出汁を加えて作るのが一般的ですね。
基本的には牛肉などの赤身肉のソースとして使われます。
作り方自体はシンプルなのですが、使用するフォンやワイン、その他の素材によって出来上がりの味は大きく変わります。
なので今回は基本的なソースヴァンルージュを、美味しく作るためのポイントと共に解説していきたいと思います。
今回のポイントは他のソース作りにも応用できますので、ぜひ覚えていってください。
では早速始めていきましょう。
目次
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ソースヴァンルージュのレシピ
- 500g 赤ワイン
- 100g マディラ酒
- 100g エシャロット
- 300g フォンドヴォーコルセ
- 30g 発酵バター
- 10粒 粒黒胡椒
- 適量 コーンスターチ
- 適量 塩、黒胡椒
※マディラ酒はポートワインやマルサラなどの他の酒精強化ワインで代用可。
※発酵バターが無ければ普通のものでも可。
※フォンドヴォーコルセは下の記事の『フォンドヴォーコルセとは?』の項目参照。↓
作り方
①粗みじん切り、もしくはスライスしたエシャロットと粒黒胡椒を鍋に入れ、少量のサラダ油とバター(分量外)で炒める。
②全体的にうっすらと色づいて香ばしい香りが立ってきたら赤ワインとマディラ酒を注ぐ。
③そのまま火にかけ続け、水分がほぼなくなるまで煮詰める。
④水分がほぼ無くなってツヤが出てきたらOK。
フォンドヴォーコルセを加える。
⑤再度沸かしたらシノワ(目の細かいザル)で濾す。
濾す際はしっかりエシャロットを押しつぶして絞るようにして濾すと良い。
⑥塩と黒胡椒で味を調える。
その際に旨味が足りなければフォンドヴォーコルセを足すかさらに煮詰めるかして調節する。
⑦必要に応じて水溶きコーンスターチで濃度を調節する。
⑧角切りにしておいたバターでモンテする。
ソースの仕上げに油脂を加えて乳化させることによってソースにツヤと濃度、コクを与える技法。
今回はバターを使ったがオリーブオイルやピーナッツオイルなどを使う場合もある。
⑨完成。ウマー。
保存しておく場合は仕上げのバターを加える前の状態で急冷し、冷蔵庫で3日ほど保存可。
バターモンテしたソースはなるべくその日のうちに使い切る。
ソースヴァンルージュを美味しく作るポイント
さて、基本的なソースの作り方の流れは上記の通りですが、この解説だけでは見えないところに美味しく作るポイントがたくさん潜んでいます。
ここではそのポイントをひとつずつ詳しく解説していきます。
ソースに糖分を加える
ソースは旨味、香り、酸味、甘みのバランスで成り立っています。
合わせる食材によってはどれかの要素を立たせることもありますが、基本的には全てバランス良く仕上げる方が万人受けする味になるかと思います。
その上で、甘みというのは意外と見落としがちなポイントで、ソースをなめて何か物足りないなと感じる時は甘みが足りていないということが多い気がします。
基本的に赤ワインは辛口しかなく、液中の残糖分は非常に少ないので、赤ワインだけを煮詰めてソースを作ると甘みが不足して、酸のカドが立ってしまったりします。
なので今回のレシピではマディラ酒などの酒精強化ワインを使い、糖分を足してあります。
酒精強化ワインがなければ、仕上げに蜂蜜や砂糖を足しても問題ありません。
ソースの味を見て物足りなさを感じたときは、一度ソースの甘みの部分を意識してみてください。
余計な水分は飛ばす
フランス料理のソース作りの基本は煮詰めることです。
ソースの味をボケさせないために余分な水分を徹底的に飛ばして味を凝縮させてやる必要があります。
今回のソースヴァンルージュでの煮詰めるポイントは2つあり、ひとつめは
『赤ワインを煮詰める時』
です。
赤ワインの殆どは水分なので、できるだけギリギリまで煮詰めないと余分な水分が残ってしまいます。
これは作り方の所でも解説していますが、水分が無くなってツヤが出てくるまでしっかり煮詰めてあげましょう。
そしてもうひとつが、
『フォンドヴォーコルセを加えた後』
です。
ソースの旨味と余韻の長さはフォンの味にかかっています。
しっかり旨味のあるフォンを使わないと物足りない味になってしまいますし、フォンのゼラチン質が少なければ余韻が短くなり肉の味に負けてしまいます。
なのでここでもしっかり煮詰めて、味見の段階で舌に残るソースの余韻の長さを確認しておきましょう。
薄切り肉などに合わせる場合はちょっと余韻が短めのさらっとした感じのソースに、逆に厚切りの赤身肉などはその咀嚼時間も考えて余韻が長めの濃厚なソースに仕立てる…
といった具合に合わせるものによってフォンの濃度を調節すると良いでしょう。
モンテ用のバターは発酵バターが望ましい
ソースヴァンルージュの味がボケる原因のひとつに、モンテのバターの加えすぎというのもあります。
バターは良くも悪くもソースの味をマイルドにするのでバランスが重要になるのですが、普通のバターよりも発酵バターの方が風味、旨味ともに強く使用量が少量で済みます。
なのでソースの風味を損なわずに仕上げることができるので、発酵バターの方がよりモンテに向いていると言えるでしょう。
コーンスターチはあくまでも最後の濃度調節に
コーンスターチは仕上がったソースの濃度がゆるくて、でもソースの旨味が充分にあって、これ以上濃度を濃くするために煮詰めてしまうと旨味過多になってしまうというときにだけ使ってください。
旨味やゼラチン質が足りずにただただシャバいだけのソースに無理やり濃度をつけても美味しいソースにはなりません。
あくまでもコーンスターチは最後の調整用です。
安物のジュースみたいなワインは使用しない
ソースヴァンルージュは赤ワインが持つ酸味や苦みを活かして作ります。
そのため、複雑な苦みを持つタンニンが全く感じられないような薄っぺらい味のワインを使ってしまうと、その分味に奥行きがなくなります。
とはいえめちゃくちゃ渋いワインをわざわざ選んで使う必要もないので、とりあえずざっくりミディアムボディ~フルボディぐらいの、気持ちしっかりめのワインを選ぶって感じで問題ないと思います。
あとこれは私もそこまで詳しいわけではありませんが、ワインには旨味成分であるグルタミン酸やアスパラギン酸が含まれています。
そしてそれは発酵、熟成の過程で増加していき、特に澱熟成によって大きく増加するようです。
なのでそういった意味でも良いワインを使うとそれだけしっかりと奥行きのあるソースを作り出すことができる、という風に考えられますね。
その他の注意点やよくある質問など
なぜエシャロットを炒めるのか?
よくソースヴァンブランのエシャロットは炒めないのになんでソースヴァンルージュは炒めるの?
ということを聞かれます。
これはソースによって欲しい香りや要素が違うから、というのが答えになります。
どういうことかといいますと、まずソースヴァンブランはエシャロット、白ワイン、生クリームが主原料のソースです。
生クリームがベースだと非常にマイルドな味になるので、そこにアクセントとしてエシャロットの辛味や鮮烈な香りが欲しいわけです。
エシャロットをあらかじめ炒めてしまうとその辛味成分は揮発してしまうので、ソースにキリッとした辛味を加えることができなくなってしまいます。
あと炒めた香ばしい香りは上品なソースの妨げになるというのも大きな理由の一つですね。
逆にソースヴァンルージュはエシャロットの甘みや香ばしい香りが欲しいので炒めます。
先ほども説明した通りソースヴァンルージュは甘みがポイントとなります。
赤ワインは残糖分が少ないためエシャロットの甘みを引き出して使うほうがよりバランスが良くなります。
とはいえ、どちらもこうしなければいけない!という話ではなく一般的にそうだというだけなので、もしなんらかの意図があるならばソースヴァンブランのエシャロットを炒めてもいいですし、ソースヴァンルージュのエシャロットを炒めないで作っても間違いではありません。
ソースの色が褐色ではなく赤紫っぽくなる
これは単純にフォンの量が足りていない可能性が高いです。
もちろんフォンをあまり加えずにワインの風味を活かして作る場合もありますので、これはこれでありなのですが意図せずこうなってしまったのならフォンを足してください。
あともうひとつ考えられるのが、そもそものフォンがうまく引けていないという点です。
フォンに使う肉と香味野菜をしっかり色づけて香ばしい色のフォンを作り、それを限界手前まで煮詰めると必ず濃い褐色のフォンになるはずです。(下の画像参照)
もしソースに加えたフォンが白っぽく濁ってしまっているような状態ならば、フォンからしっかり作り直しましょう。
油が浮いたソースになってしまう
これはおそらく濃度不足です。
シャバシャバのソースをバターモンテしても少し時間を置くとすぐに分離してしまいます。
おそらくフォンの濃度が足りていないと思うのでしっかり煮詰めてやりましょう。
しっかりフォンを煮詰めたうえでシャバシャバになる場合は、そもそもフォンの量が少なすぎる可能性がありますので、さらに煮詰めたフォンを加えましょう。
旨味は充分にあって、でもシャバシャバ、バターが分離してしまうという場合は先ほども書いた通りコーンスターチで濃度を調節してください。
コーンスターチを加えるとかなり乳化しやすくなるはずです。
仕上げに煮詰めた赤ワインを加えるのはあり?
人によってはソースヴァンルージュの仕上げに、しっかりツヤがでるまで煮詰めた赤ワインを少しだけ加えて赤ワインの香りや酸味を強調するといった作り方をする場合があります。
これはもちろんありです。
私は香りに関してはどちらにせよ埋もれてしまうと感じるので、最後の酸味調節で使うことが多いですね。
余ったワインなどを集めて、煮詰めておいたものをストックしておくとソースの仕上げの味の調節でさっと使えて便利です。
おわりに
クッソ激烈に長くなってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございます。
一応私がソースヴァンルージュを作るときに意識していることは全て書いたつもりですが、もしわからないところや疑問に感じる部分がありましたら、コメント欄かTwitterのDMなどから質問いただければと思います。
あと全て読んで頂いた方はなんとなくお気づきかと思いますが、ソースヴァンルージュのクオリティは結局フォンの味で8割ぐらいは決まります。
フォン自体がが美味しくないとどれだけ良いワインをしっかり煮詰めたところで美味しいソースにはなりません。
なのでぜひフォンに関する記事も合わせてご覧ください。
こちらもクッソ詳しく美味しく作るためのコツを書いておりますので。↓
それでは本日もお読みいただきありがとうございました。
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作ったのですが、こう…歯がキシキシ言うタンニン?感みたいなものを感じられますがこれはそういうソース何でしょうか?作り方が悪かったのか赤ワインが悪かったのか。
赤ワインを煮詰めるのでタンニンはある程度残るのですが、使用するワインを変えることで解決する可能性はあります。
また、口の中に残るのはタンニンではなくゼラチン質の可能性もあります。
フォンを煮詰める都合ゼラチン質が強く出て舌や歯にまとわる感じはある気がします。
これを解決するためには使用するフォンを二番を煮詰めたもののみにしたり、元のフォンの牛骨を減らして肉を使い、ジュ寄りにすると解決するかと思います。
あとは少々味のバランスは変わりますが、生クリームやバターなどの乳脂肪分を多めに加えることでべたべたとした後味を多少改善することもできます。
以上の全ての要素のバランスコントロールでソースヴァンルージュの口当たりは決まるので、少々難しいとは思いますが、参考になれば幸いです。