皆様こんにちは、こんばんは。
去年3か月で印鑑を2回無くした私はきっと日本に向いていないと思います。
印鑑のうっかり紛失に気をつけましょう。
さて本日は、
『プロの為のフォンドヴォー講座』
をやっていきたいと思います。
フォンドヴォー(Fond de veau)は直訳すると『仔牛の出し汁』という意味で、仔牛の骨やスジ、クズ肉などを香ばしく焼いて香味野菜と共にじっくりと煮出して作ります。
ただ、仔牛の骨は流通量が少なくレストランなどでもなかなか手に入らないので今回は成牛の骨を使用して作ります。
厳密に言えば成牛はVeauではなくBoeuf(ブフ)なので、正しくはFond de boeufとなるのですが面倒なのでこの記事内ではFond de veauで統一させていただきます。
成牛の方が仔牛と比べてゼラチン質や脂が多く、香りも強いので力強い味に仕上がります。
なので料理によって多少向き不向きは出てしまいますが、基本的には問題なく使用していただけます。
今回はプロ用のレシピなのでご家庭でやる気が起きないほど手間はかかりますがクリアで美味しいフォンを作るための工程をクッソ詳しく解説しておりますのでご興味がありましたらぜひご覧ください。
では早速始めていきましょう。
目次
フォンドヴォーのレシピ
- 5kg 牛骨
- 2kg 牛スネ肉
- 1kg 牛スジ肉やクズ肉
- 1kg 玉葱
- 300g 人参
- 300g セロリ
- 15個 マッシュルーム
- 20粒 黒胡椒ホール
- 適量 ブーケガルニ
※牛スジ、クズ肉は旨みの補強として加えているのであればで良い。
フォンドヴォーの1番出汁を抽出する
①まず牛骨を用意し、血や汚れがついていたらあらかじめしっかり洗っておく。
綺麗になった牛骨を天板に並べてオーブンでローストする。
基本的に骨には焼き色はつかないので180℃とかの高温でローストしてしまうと
中の骨髄(モアロ)が焦げてしまう。
なので今回は100℃で約6時間、その後様子を見ながら140℃で約1時間、
余分な水分を完全に飛ばしきるイメージでローストしていく。
②次に牛スネ肉をローストしていく。
7~8cm角ぐらいの適当な大きさにカットして、
こちらも水分をしっかり抜くことを意識しながら焼き色を付ける。
今回の火入れ時間はまず100℃で約4時間、その後150℃で約1時間加熱している。
③肉類がローストできたら寸胴にお湯を沸かす。
湯の量は適当で良いが牛骨とスネ肉がしっかり浸るぐらいの量を用意する。(約10リットル)
フォンドヴォーとは直接関係ないが、骨と肉をローストしたあとの天板には水分が飛んだ牛の脂が残るので、
これをペーパーで濾すとグレス・ド・ブフ(ラードの牛ver.)ができる。
炒め物や揚げ物に使ったり、牛のソースの仕上げの風味付けなどに使用することができる。
④お湯が沸いたらローストした牛骨とスネ肉を加えて再度沸かして灰汁をとる。
牛骨とスネ肉の水分をしっかり抜いておけばこの時灰汁はほぼ出ない。
逆に黒っぽい灰汁がでるようならば水分の抜き方が甘かった可能性が高い。
⑤一度沸かしたら、あとは全体が軽く対流するぐらいの火加減に落として煮出していく。
⑥肉類をローストし終えたら空いた時間で香味野菜もローストする。
香味野菜も水分をしっかり抜きながら焼き色をつけることを意識する。
一般的に煮出し時間が長いフォンの香味野菜は大きくカットすることが多いが、
カットが大きいと焼き色をつけられる面積が小さく、
水分も十分に抜くことができないので大体3~4cm角ぐらいの大きさにする。
ニンニクは丸のままでいい。
今回のロースト時間は120℃で約4時間。
⑦マッシュルームは半分にカットしてフライパンでしっかり色づくまで炒める。
マッシュルームだけオーブンではなくフライパンで加熱する理由は、
油をしっかり吸わせて高温で加熱しないと香ばしい焼き色と香りがでないため。
⑧ローストした香味野菜とマッシュルームを寸胴に加えてさらに煮出す。
煮出す時間は始めに沸騰してから約8時間を目安とする。
⑨約8時間煮出した状態。
しっかり素材の水分を抜いてから煮出せば灰汁とりの作業はほぼせずに放置していても、
これぐらいのクリアな仕上がりになる。
⑩シノワ(目の細かいザル)で濾す。
このとき肉や香味野菜は潰さずに自然に落とすだけで良い。
また、牛骨とスネ肉はこのあと2番出汁をとるのに使用するので捨てないように避けておく。
香味野菜は捨ててしまって良い。
⑪フォンドヴォーの1番出汁の完成。
急冷して冷蔵庫で一晩おき、余分な脂を冷やし固めて取り除く。
⑫脂を取り除いたら好きな濃度に煮詰めたりして保存する。
なお、煮詰める際は始めだけ灰汁が出るのでしっかり取り除いておく。
冷蔵保存で約3日、冷凍で約2ヶ月を目安に使いきる。
このあと抽出する2番出汁と合わせて使用する場合は合わせたあとに濃度を調節すれば良い。
フォンドヴォーの2番出汁を抽出する
①1番出汁で使った牛骨とスネ肉を寸胴に戻してしっかり浸るぐらいの水を張って火にかける。
なお、1番出汁を煮出す過程でミンチ状に煮崩れてしまった肉片は取り除いてしまって良い。
②牛スジ肉やクズ肉があれば、また水分をしっかり抜きながらローストしてから旨味の補強に加える。
牛スジ肉は臭みがある部位が含まれていることもあるので
しっかりと水分を抜かないと匂いが出てしまう可能性があるので注意する。
また、必要に応じて香味野菜も加える。
ちなみに今回は1番出汁の1/3ほどの量の香味野菜を加えてある。
④一度沸かして灰汁が出れば取り除いて、
そのまま全体が軽く対流するぐらいの火加減にして煮出していく。
2番出汁は約6時間を抽出時間の目安とする。
⑤6時間煮出したらシノワで濾し、
一度沸かして浮いてきた灰汁を取り除く。
⑥好みの濃度まで煮詰めたら急冷して、
1番出汁と同じように脂を冷やし固めて取り除いたら2番出汁完成。
⑦最後に1番と2番を合わせて仕上がり約8リットルまで煮詰める。
もし2番出汁だけで使う場合はしっかり旨味が出て濃度が出るぐらいまで煮詰めておくと使いやすい。
1番出汁と2番出汁の違い
フォンドヴォーはほとんどの人が2番出汁までとります。
中には賄い用などで3番出汁までとるレストランもありますが、
ではなぜフォンドヴォーは1番と2番を分けてとるのでしょうか?
1番と2番を合わせた時間、
つまり14時間火にかけていれば同じようなものは作れないのでしょうか?
ここからは1番と2番を分けてとる理由と、
1番と2番の違いについてお話していきます。
フォンドヴォーの1番出汁
フォンドヴォーの1番出汁は、
牛骨やすね肉からのゼラチン質が溶け出し、香りもしっかりとあります。
このまま肉の煮込みに使用したり、軽く煮詰めてソースのベースにしたりと、
非常に汎用性の高いフォンですね。
フォンドヴォーの2番出汁
フォンドヴォーの2番出汁は1番出汁で抽出しきれなかった、
牛骨やすね肉の旨みをとり切るために作ります。
画像を見ていただければわかるように1番出汁に比べてゼラチン質は少なく、
香りも1番出汁ほどしっかりとした牛の香りがありません。
なので、1番出汁のようにこのままソースに使用したりせずに、
しっかり煮詰めて旨みを凝縮させてからソースのコク出しに少量加えたり、
コンソメやスープのベースに使用したりする場合もあります。
↑フォンドヴォーの2番出汁をしっかり煮詰めたもの。
グラス・ド・ヴィヤンド(glace de viande)と呼ばれ、
煮凝り状になったものを適当な大きさにカットして使われることが多いです。
上で書いた通りソースの仕上げに加えたり、
細かくして肉のファルス(詰め物)に旨みの補強として加えたりします。
1番と2番をわけて抽出する理由
1番出汁をとったあとに2番出汁をとる理由は、
1番出汁で抽出しきれなかった骨髄の旨みなどを抽出しきるためです。
でも抽出しきれかったのなら抽出しきるまで長い時間煮出せばいいのではないか?
と思われるかもしれませんが、こうしないのは
ある程度旨みの濃度がある液体には素材の旨みが溶け出しにくいから
という理由からです。
真水は旨みの元となるアミノ酸を持っていないので、
アミノ酸をしっかり持っている素材からアミノ酸が溶け出しやすい状態となりますが、
しっかり煮出したフォンドヴォーは旨みがしっかりとあり、
濃度が濃い状態となっているので素材からアミノ酸が溶け出しづらいのです。
よって一度旨みを持った液体を濾してしまってから、
再度真水で煮出した方が効率的にアミノ酸を抽出できる、
というのが1番と2番を分けて抽出する理由となります。
さらにもうひとつのメリットとしては、
性質の違う2種類の出汁が抽出できる
という点も挙げられると思います。
上記の通り、1番出汁はゼラチン質も牛の香りもしっかり持っているので、
グラス・ド・ヴィヤンドのようにしっかり煮詰めて使用するのにあまり向いていません。
ゼラチン質が強くなりすぎてベトベトになりますし、
せっかくの香りが台無しになってしまいます。
その点、2番出汁はゼラチン質が少ないので、
しっかり煮詰めて純粋な牛の旨みを凝縮させることができます。
なので香りのあるまろやかなソースが良ければ1番出汁だけで作ってもいいですし、
それが物足りなければ2番出汁で旨みを補強する。
そしてゼラチン質があまり必要なければ2番出汁で作った、
グラス・ド・ヴィヤンドだけでソースを仕上げたりと、
1番と2番をわけることで様々な状態のソースを作り上げることが容易になります。
1番と2番を合わせる理由
さてここまで1番と2番を分けて抽出することのメリットを書いてきましたが、
『お前作り方の所で1番と2番合わせとるやんけ!』
と思った方も多いのではないでしょうか。
上記のように1番と2番を分けて使用する方が汎用性は高いのですが、
実際、小さい店舗ではそんなに何種類もソースを作ったりせず、
フォンドヴォーの用途が限定されていることが多いです。
なので汎用性よりも使い勝手の良さで、
1番と2番を合わせたバランスの良いフォンドヴォーを作って保存しておく方が
楽だからという理由で合わせています。
逆に大規模なクラシックフレンチのお店などではやはりフォンドヴォーをベースに
多くの種類のソースや煮込みを仕込んだりするので、
それぞれの料理に合った使い方をするために分けて使用することが多いですね。
なので色々派生させて使うぜ!という方は分けて、
用途はもう決まってるぜ!という方は合わせてしまっていいと思います。
まあこれはどちらが正しいということではないので、
用途に合わせてお好きな方法で保存していただければと思います。
おわりに
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
料理書などでもフォンドヴォーの作り方はよく見かけるのですが、
大体は骨と野菜を焼いて何時間煮出して濾すって感じのアバウトな説明ばかりなので
できるだけ詳しく工程を書いてみましたがいかがだったでしょうか。
ここでは書ききれなかった理論的に部分に関しましては、
以前書いた記事の『プロ向けフォン・ド・ヴォライユのレシピ』
をご覧いただければと思います。↓
あとこちらの記事にも出汁の抽出についての理論をちらっと書いてあります。↓
本記事とこのフォンドヴォライユの記事を合わせて読んで頂ければ、
褐色の西洋出汁についての理解がより深まるかなと思います。
また、もっと詳しく工程や理論について知りたい!
ということがありましたらTwitterのDMやらなんやらで気軽に聞いてください。
それでは本日もお読みいただきありがとうございました。
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