皆様こんにちは。ボンジュール。
『石見』と書いて『いわみ』って読むの初見には厳しすぎませんかね。(1敗)
今日は、
『プロの為のフォン・ド・ヴォライユ講座』
ということで、美味しくクリアなフォンを抽出するためにはどうすればいいかを詳しく解説していきます。
一応プロの方向けに書いていきますので、そこまでガチじゃねーよという方はそっとブラウザバックを押してください。
フォン・ド・ヴォライユは直訳すると『鶏の出汁』という意味で、香ばしく焼き色を付けた鶏ガラや香味野菜を煮出した褐色の出汁の事を指します。
ちなみに焼き色を付けずに抽出した白い出汁は『フォン・ブラン・ド・ヴォライユ』といいます。
こちらもいずれ解説しようと思っていますが、今回は褐色出汁の方にスポットを当ててやっていきます。
私自身、幾つかのお店のフォン・ド・ヴォライユのレシピを見てきたのですが、教科書そのままのことをなんとなくやっているだけの薄っぺらい味のフォン・ド・ヴォライユを引いているお店は少なくありません。
フォン・ド・ヴォライユ、フォン・ド・ヴォーなどの基本の出汁が美味しくない店は、もちろんソースも大した味になりません。
出汁を引く上で大事な事は、料理が美味しくなるロジックを理解することです。
今回の前編では主にロジック面を、そして後編では工程を中心に解説していきますので、ぜひ合わせてご覧ください。
では始めていきましょう。
目次
フォン・ド・ヴォライユのレシピ
- 1kg 鶏ガラ
- 300g 玉葱
- 150g 人参
- 150g セロリ
- 1/2個 にんにく
- 適量 ブーケガルニ、粒黒胡椒
※作り方の流れは後編にて画像付きでご紹介します。→ココ(´・ω・`)
※今回は鶏ガラの他にもも肉や手羽なども使用。
ガラだけでなく肉も使用した方がより旨味が出る。
素材の下処理について
鶏ガラの掃除をする理由
今回は骨と野菜を焼いて、褐色の出汁を作っていきます。
その際、褐色出汁は鶏ガラの掃除をしないという人も中にはいるのですが私はしっかりと掃除することを勧めています。
その理由は、鶏ガラを焼く際に内蔵などが付きっぱなしだと先にその内蔵部分が焦げてきます。
特に今回のレシピは長時間オーブンで加熱しますので尚更です。
焦げた内臓は出汁にとって邪魔なものでしかありません。
仮に焦げなくとも灰汁、臭みの原因になりますので必ず全て綺麗に掃除しておいてください。
鶏ガラは水にさらすか
これは人によって意見が分かれるところですが私は褐色出汁の場合は基本的には水にさらしません。
古くなって匂いが気になるガラならともかく、しっかり水分を抜き切るようにローストして臭みが出ないようにしてから煮出すので、表面についた血や汚れをさっと洗い流すぐらいで充分です。
というかそもそも鮮度の落ちたガラはフォンに使用しませんので水にさらす必要はない、というのが答えですね。
鶏ガラをどれぐらい焼くか
ここが今回一番のポイントです。
適当に焼いた鶏ガラではその後どんなに丁寧に手をかけたところで美味しくはなりません。
まずなぜ鶏ガラを焼くのか?という理由なのですが、タンパク質は加熱を続けるとメイラード反応という現象が起き、香ばしく食欲をそそる香りが出ます。
褐色の出汁はこのメイラード反応による香ばしい焼き色を液体に溶かし込むのが目的で骨や野菜を焼きます。
つまり
『いかに綺麗に全体にしっかりとした焼き色を付けるか』
これが今回のポイントです。
綺麗に焼き色を付けるときに邪魔なもの、それは水分です。
メイラードは水溶性なので、水分を多く含む物質には定着しません。
一般的な料理書では180℃ぐらいのオーブンで鶏ガラを焼く、と書かれていることが多いですが、この温度では鶏ガラの水分が抜け切る前に表面が焦げてしまい、あまり焼き色が付きません。
表面だけ高温で適当に焼き色を付けた鶏ガラで出汁を引いてしまうと、微妙に鶏臭い中途半端な味の出汁になります。
『出汁を引いてるけどなんかあまり美味しくない』と悩んでる料理人の方、こんな焼き方をしていませんか?
私が鶏ガラを焼くときは、まずは120~130℃ぐらいのオーブンに入れて加熱していきます。
メイラード反応は140℃前後から活発になるので、それに近い温度で火を入れつつ鶏ガラの水分を飛ばしていきます。
部位や大きさにもよりますが、この温度帯で3~4時間程火を入れるとほぼ水分がなくなって、全体に綺麗に色づきます。
あとメイラード反応に水分は邪魔なものなのですが、水分がゼロの状態でもうまく反応しません。
なので水分を抜きつつも焼き色を付けられるこれぐらいの温度帯が最適だと私は思います。
しっかり色づいたら最後に残った水分を完全に飛ばすために80℃のオーブンでカラッカラになるまで乾かして準備完了です。
この工程はすでに水分がしっかり飛んでいたら省略してOKです。
香味野菜の焼き方
香味野菜を焼くときの考え方も基本的には鶏ガラと同じです。
120℃ぐらいのオーブンで水分を抜きつつ軽く色づけていきます。
ただ鶏ガラと違って、香味野菜はオーブンだと端の方が焦げやすいので、オーブンだけで最後まで焼き切らず、ある程度の所で取り出してから多めに油を入れたフライパンで焼き色を付けていきます。
多めに油を使うことによって、均一に熱が伝わるので全体的に綺麗に焼き色を付けやすくなります。
中火から弱火で加熱して、全体的に香ばしく色づいたものから取り出していきます。
決して焦がさない様に丁寧に焼きましょう。
抽出について
抽出の過程で注意するべきこと
さて、鶏ガラと香味野菜の準備が済んだら後はひたすら煮出すだけです。
寸胴鍋に素材全部が浸るぐらいのお湯を沸かしておきます。
冷たい水から素材を入れてしまうと灰汁が水の中に溶け込んでしまい、取り出しにくくなるので必ず沸騰したお湯に素材を入れてください。
ただ実際のところ綺麗に焼いた鶏ガラからはほぼ灰汁は出ないので、理論上は冷水からでも問題無いのですが、比べてみると微かに冷水から引いたものの方が臭みがあるように感じたので私はお湯から煮出すようにしています。
沸騰したお湯に鶏ガラを入れると灰汁は水に溶けだす前にすぐ凝固して浮いてくるので、はじめに一回軽く灰汁を引いたらその後は灰汁を引く必要はありません。
あとお湯から煮出すもう一つの理由はメイラードです。
先程述べた通り、メイラードは水溶性の物質なので、水に入れるとどんどん溶けだしていきます。
つまり、水から煮出すと沸騰するまでにもメイラードが溶け出していき、その状態で灰汁をちまちま引いているとメイラードが溶け出した旨味のある液体も少しずつ捨てていることになります。
沸騰状態からだと、メイラードがほとんど溶け出していない状態で1回灰汁を引くだけで済むので、無駄がありません。
上記の理由から、沸騰状態を保つために鶏ガラも熱い状態でお湯に入れます。
先に鶏ガラを焼き終わっていても、抽出前にもう一度オーブンに入れて熱々にしてから入れると沸騰状態を保てます。
野菜を入れるタイミング
次は出汁を煮出す時間についてです。
素材の旨味が全部出終わるまで煮出すのですが、旨味が出終わったかの確認は鶏ガラを齧ってみたり、骨が崩れ出したらなど、判断する方法は幾つかありますが、私は自分が必要だと思うラインまで旨味の濃さが来たら止めるので、出汁の味で判断します。
時間にして約4時間。野菜は1時間半ほどで旨味が十分出るので、
煮出し始めてから約2時間半後に入れます。
これは野菜が煮崩れて濁らないためにしているのですが、しっかり水分が無くなるまで焼いた野菜は4時間ぐらいではあまり煮溶けたりしないので別に始めから入れてもその差は誤差レベルです。
念の為という感じですね。
濁りをそれほど気にしないのでしたら始めから入れても大丈夫です。
煮出すときの火加減
次に火加減なのですが、私はこれをさほど重要視していません。
その理由は先程述べた通り、この作り方だと灰汁がほとんど出ないからです。
料理書では軽く沸騰している状態(ミジョテ)が基本だと書かれていますが、その理由は小さな対流を起こして灰汁を浮かび上がらせるためです。
あまりに温度が低いと灰汁が出汁の中に溶けてしまいます。
逆に沸かしすぎて激しい対流が起きてしまうと灰汁が引けないだけでなく油脂分と水分が乳化してしまい、白っぽく濁ってしまいます。
今回は灰汁の存在をそこまで意識しなくても良いので、沸かしすぎなければ適当で問題ありません。
素材から旨味を抽出するのは80℃ぐらいあれば充分なのでそれを下回らないぐらいを保ちましょう。
完成。あとは用途に合わせて
以上の方法で約4時間煮出したフォン・ド・ヴォライユは臭みがなく、
しっかりとした旨味と香ばしい香りを持った極上のものになるはずです。
あとはシノワで濾して、用途に合わせて煮詰めたりします。
私は基本的にはフォン・ド・ヴォライユはソースのベースに使うので、濾したフォンにトマトペーストを加えてしっかりと濃度が出るまで煮詰めていきます。
コンソメに使うときは、濾したフォンに少量のトマトペーストを加えてしっかりと沸かして灰汁を引きます。
その後、急冷して表面に浮いた脂を取り除き、クラリフィカシオンと合わせてコンソメにします。
ちなみにトマトペーストを最後に加える理由は、先に入れてしまうと液体の濃度と旨味成分が濃くなってしまい、その状態では鶏ガラや野菜から旨味成分が出にくくなるからです。
終わりに
長々と字ばっかりですみません。手が疲れました。
後編では画像を差し込みつつ鶏ガラ掃除から
完成までの流れを順を追ってご紹介させていただきます。→後編(´・ω・`)
散々偉そうに説明してきましたが、これはあくまでも私の中での正しいフォンの引き方です。
全てにおいて完璧ではないかもしれません。
ですが、この記事を見てフォンについて改めて考えてもらえるきっかけになればとても嬉しく思います。
それでは本日もお読みいただきありがとうございました。
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