2種類の人工イクラの作り方



皆様こんにちは、こんばんは。
フランス料理人がはまりがちな2大沼は「パテ・テリーヌ沼」と「コンソメ沼」だと個人的に思っています。
皆様はどんな沼にはまりましたか?

さて本日は、
『2種類の人工イクラの作り方』
をご紹介します。

人工イクラというものに関しては、皆様大体どんなものかというのはご存じだとは思いますが、簡単にいうとイクラの味をイメージして作られた模造品の事を指します。

今回は実際にイクラの味を再現するわけではなく、あのイクラのような食感の粒々の物体を作ろうぜ!という回ですね。
一時期モダンスパニッシュのお店などで使われているのを体験した方も少なくないのではないかなと思います。

以前ベジタブルゼラチンを使ったスフェリフィケーションは紹介しましたが、今回はそれとは少し違った方法で作っていきます。
作る前からこんなことを言ってはアレなんですが、この人工イクラに関しては使いどころが難しく私も基本的には使わない技術ではあります。
なのでまあ、あくまでもこんな技術もあるんだなぐらいの軽い気持ちでご覧ください。

ちなみに今回は2パターンの作り方を紹介します。
1つは「アルギン酸」と「乳酸カルシウム」を使うやり方。
2つめが「アガー」を使うやり方です。
(※アガーを使用したものは正確には人工イクラとは別物で、一般的にはパールと呼ばれたりします。)
それぞれの違いに関してはまた作り方の項目で詳しく解説していきたいと思います。

前回のスフェリフィケーションの作り方はこちらから。↓

ベジタブルゼラチンを使ったゼリードーム(スフェリフィケーション)のレシピ

17/08/2019

では始めていきましょう。

目次

アルギン酸を使用した人工イクラの作り方

用意するもの

固めるベース(今回はマンゴーソースを使用)

  • 85g マンゴーピュレ
  • 20g グラニュー糖
  • 40g 水
  • 5g  レモン汁

アルギン酸ナトリウム

乳酸カルシウム

スポイト、ピペット等

ハンドブレンダー(※無くても時間をかければ作れる)

穴あきスプーン(※無くてもザルなどで代用可)

作り方

①まず固めるためのベースを用意。
水とグラニュー糖で作ったシロップにマンゴーピュレとレモン汁を合わせたマンゴーソースを作る。

②マンゴーソースに重量の1%のアルギン酸ナトリウムを溶かす。
アルギン酸ナトリウムは非常に溶けづらいので、ハンドブレンダーで攪拌すると良い。
ハンドブレンダーが無い場合は、少量ずつ溶かし込んでいくか、時間をかけて水分を吸わせながら混ぜていく。

③気泡が多くできていると綺麗に作れないので、一旦シノワ(目の細かいザル)で濾す。

④次に乳酸カルシウム水溶液を作る。
水に2%の乳酸カルシウムを加えてしっかり溶かす。

⑤スポイトかピペットを用意する。
手前にあるような注入器などでも代用可。

⑥アルギン酸ナトリウムを溶かしたマンゴーソースをスポイトで吸い上げ、乳酸カルシウム水溶液に一滴ずつ落とす。
落とす際は少し高さを付けた方が綺麗な形に仕上がる。

⑦表面がゲル化して固まったら穴あきスプーンですくい上げて水分をしっかり切る。

⑧完成。ウマー。

アルギン酸ナトリウムで人工イクラを作る際の注意点

ベースの濃度について

アルギン酸ナトリウムを加えたベースはある程度濃度がつきます。
なので元々のベースの固さによって扱いやすさが変わってきますので、あまりにも濃度のあるベースを使う場合はシロップなどでのばしたりして調節してから使うと良いでしょう。
逆に濃度が無さすぎると綺麗な形で固まらずにいびつな仕上がりになってしまいます。

ハンドブレンダーが無い場合の効率の良い溶かし方

アルギン酸ナトリウムは液体に一気に加えるとダマができ、完全に溶かしきるには時間がかかります。
これを解決するためには、前述の通りごく少量ずつ溶かし込んでいくか、あらかじめグラニュー糖などとアルギン酸ナトリウムを混ぜておいて、それを加えることで多少改善することができます。

とはいえ溶けづらいことには変わりないので、ハンドブレンダーの使用をおすすめします。

アルギン酸ナトリウムが溶けづらいベースについて

アルギン酸ナトリウムは酸性の液体や油脂に溶けづらい性質を持っています。

なのでレモン果汁を多く加えたソースや油脂を含むベースではうまく作れないことがあります。

乳酸カルシウムについて

今回の製法は、カルシウムがイオン化した水溶液であればゲル化反応を起こすことができます。
しかしながら、他に簡単に手に入る塩化カルシウムなどは苦みがあり、味への影響が出てしまうので、必ず乳酸カルシウムを使用するようにしましょう。

アガーを使った人工イクラの作り方

用意するもの

固めるベース(今回はマンゴーソースを使用)

  • 85g マンゴーピュレ
  • 20g グラニュー糖
  • 40g 水
  • 5g  レモン汁

アガー

スポイト、ピペット等

サラダ油(※低温時に凝固しないオイルならなんでも良い)

穴あきスプーン(※無くてもザルなどで代用可)

作り方

①適当な量のサラダ油を金属製の容器に入れて冷凍庫でしっかり冷やしておく。

②鍋にベース(マンゴーソース)を入れて温める。
そこにベースの重量の4%のアガーと、それと同量のグラニュー糖を混ぜ合わせたものを加えて溶かす。

③混ぜながら一旦しっかり沸かし、アガーを完全に溶かす。

④冷凍していたサラダ油を出して、温度が上がらないように氷をかませておく。

⑤アガーを溶かしたベースの温度が80℃ぐらいに落ちたらスポイトで吸い上げ、サラダ油の中に一滴ずつ落としていく。
ベースがかなり熱いので火傷には注意する。

⑥サラダ油でしっかり冷やされて凝固したら穴あきスプーンですくい、冷水を入れたボウルでサラダ油を洗い流す。

⑦しっかり水を切ったら完成。ウマー。
これは正確には人工イクラではなくパールと呼ばれている技法だが、アルギン酸ナトリウムを使うよりも手軽に似たようなものを作ることができる。

アガーを使った人工イクラを作る際の注意点

非加熱で作ることができない

アガーを使う際はアルギン酸ナトリウムの時と違って高温でアガーを溶かす必要があるので、フレッシュな風味を出すものや加熱によって状態が変わるものには使用できません。

油脂を含むものは使用できない

アガーは油脂を凝固させることができないので、油脂を含むベースで作ると分離してしまいます。

おわりに

今回は人工イクラの作り方について紹介させていただきました。
人によっては今更かよ!って感じの技法ではありますが、なにかしらの役に立てば幸いです。

冒頭でも触れたとおり、なかなか使いどころが難しいので、実験感覚で作ってみて即座に封印する方が多いイメージですが、皆様はどんな風に使うと良いと思いますか?

個人的には味や香りの強いソースを固めて皿の上に散らし、アクセントにするのが一番無難かなと思います。
ソースの味が混ざらないので、しっかり味のメリハリを利かせたいときにはいいかもしれませんね。

また他にも、少し変わった技術について紹介している記事もありますので、ぜひ合わせてご覧ください。↓

ニンニク風味の温かい泡のソースの作り方

17/09/2020

ベジタブルゼラチンを使ったゼリードーム(スフェリフィケーション)のレシピ

17/08/2019

それでは本日もお読みいただきありがとうございました。
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