プロの為のフォンドヴォーの作り方と理論

皆様こんにちは、こんばんは。

さて本日は、
『プロの為のフォンドヴォーの作り方と理論』
をご紹介します。

フォンドヴォー(Fond de veau)は直訳すると『仔牛の出し汁』という意味で、仔牛の骨やスジ、クズ肉などを香ばしく焼いて香味野菜と共にじっくりと煮出して作ります。
ただ、仔牛の骨は流通量が少なくレストランなどでもなかなか手に入らないので今回は成牛の骨を使用して作ります。

厳密に言えば成牛はVeauではなくBoeuf(ブフ)なので、正しくはFond de boeufとなるのですが、ややこしくなってしまうのでこの記事内ではFond de veauで統一させていただきます。

成牛の方が仔牛と比べてゼラチン質や脂が多く、香りも強いので力強い味に仕上がります。
なので料理によって多少向き不向きは出てしまいますが、基本的には問題なく使用していただけます。

今回はプロ用のレシピなのでご家庭でやる気が起きないほど手間はかかりますがクリアで美味しいフォンを作るための工程を、ひたすらに詳しく解説しておりますのでご興味がありましたらぜひご覧ください。

では早速始めていきましょう。

目次

フォンドヴォーのレシピ

  • 2kg  牛骨
  • 3kg  牛スネ肉
  • 1kg  牛スジ肉やクズ肉
  • 800g 玉葱
  • 400g 人参
  • 300g セロリ
  • 1個   ニンニク
  • 10個  マッシュルーム
  • 20粒  黒胡椒ホール
  • 適量   タイム、ローリエ

※牛スジ、クズ肉は旨みの補強として加えているのであればで良い。

フォンドヴォーの作り方

①骨に血や汚れがついていたらあらかじめしっかり洗っておく。
スネは5cmぐらいの適当なサイズの角切りに、スジやクズ肉はそのままで、それぞれオーブン用の天板に並べる。
この時、肉に油を塗ったりする必要はない。

②150℃のオーブンでローストする。
スネやスジの余分な水分を抜きつつ焼き色を付けていきたいので、あまり高温にはせずに1.5~2時間ほどかけてじっくりと加熱するのが望ましい。
また、この温度設定はあくまでも目安なので熱のあたり方を見ながら140~160℃ぐらいの間で調節する。

③スネ肉を50分ほどローストした状態。
スネ肉の表面が色付いてきたが、まだ水分を多く含んでいるので途中でひっくり返したりしながらさらに加熱する。
天板に水分(肉汁)が浮いているうちはまだまだ加熱不足なので肉表面の色だけで判断しないように注意する。

④骨を約1時間ローストした状態。
骨周りの余分な脂が溶けて、骨髄に火が入り縮み切ったら取り出して良い。
火が入ったものからしっかり脂を切って寸胴に入れていく。
この時に骨から出た脂は後で香味野菜の火入れに使用するので、ペーパーで濾して取り置いておく。

POINT
この時取り置いた脂はグレス・ド・ブフ(ラードの牛ver.)と言います。
余ったら冷蔵庫で保存しておき、炒め物や揚げ物、牛のソースの風味付けなどに使用することができます。

⑤1.5時間ほどローストした状態。
全体がしっかり色付いて天板にも水分が残っていないことを確認する。

POINT
細かいスジ肉やクズ肉はブロック状のスネ肉よりも焦げやすいので、状態を見てしっかり焼けたものから都度取り出しておきましょう。

⑥余分な脂を切って寸胴に入れ、骨と肉が完全に浸るぐらいの水を加えて火にかける。

⑦寸胴を火にかけている間に香味野菜をローストする。
皮付きの丸のままのニンニクと適当な大きさにカットした香味野菜に、骨から出た脂を回しかけて160℃のオーブンで加熱する。
この時、サラダ油などではなく牛脂を使用する理由は後述。

POINT
香味野菜の切り方についてですが、最近は玉葱を輪切りにしています。
フォンドヴォーにおいてはおそらく大きめの角切りが一般的だとは思いますが、角切りだと角の細くなった部分が焦げやすく、長時間ローストに向かないと判断したためです。

⑧約1時間ローストし、しっかり色づいたものから取り出して脂を切っておく。

POINT
香味野菜の加熱はフライパンでもできますが、水分を抜くまで非常に時間がかかってしまう上に、常に混ぜ続けることで野菜の表面が崩れてフォンドヴォーを濁らす原因になる恐れがあります。

⑨香味野菜のローストと同時進行で、骨と肉を煮出していく。

⑩沸騰手前ぐらいまで温度が上がると白っぽい泡と脂が浮いてくるが、特に取り除く必要はない。
肉の水分をしっかり飛ばしているため、臭みのある灰汁は出ない。

POINT
ここまでの段階でフォンドヴォーが成功しているかが決まると言ってもいいでしょう。
沸騰直前状態で多量の灰汁が浮いたり、液体が白っぽく濁っていたら肉の加熱不足です。
灰汁が出ずに常に透明な状態、かつしっかり液体に焼き色が移って香ばしい香りがしていたら完璧ですね。

⑪一旦沸騰させたらすぐに弱火に落とし、ここから約5時間ほど煮出していく。
強く対流を起こすと脂と乳化してしまい、濁りの原因となるので注意する。

⑫香味野菜のローストが出来たら、タイムやローリエ、粒黒胡椒と合わせて加え、さらに煮出していく。

⑬約5時間煮出したらシノワで濾す。
濾す際に素材を押しつぶしたりすると濁ってしまうので自然に落とすように濾すと良い。
濾しガラは二番出汁をとるので捨てずに寸胴に戻しておく。

⑭一番出汁の完成。
急冷して冷蔵しておく。

⑮二番出汁を作る。
濾しガラがしっかり浸るぐらいの水を寸胴に入れて火にかける。

⑯そこからまた5時間ほど煮出す。
一番出汁の時よりも肉や香味野菜が崩れやすくなっており、濁りやすいのでより火加減には気を付けておく。

POINT
液体を対流させず、一定の温度を保つために低温のオーブンで煮出す、という方法もあります。
もちろん寸胴が入るサイズであればという条件付きにはなりますが、110℃ぐらいのオーブンに蓋をして入れて放置しておくだけでクリアな状態のまま煮出すことができるのでおすすめの方法です。

⑰約5時間煮出したらシノワで濾して二番出汁完成。
急冷して冷蔵しておく。

一番出汁をフォンドヴォーコルセの状態にする

①一番出汁の表面に固まった脂を綺麗に取り除く。

POINT
香味野菜のローストをサラダ油ではなく、牛脂を使ったのはここで脂をしっかり固めるためです。
植物油脂が混ざると凝固が緩くなるのでここで綺麗に取り除きづらくなってしまいます。
小さなことではありますが煮詰める段階でのクリアさに影響するので、可能な限り植物油脂は使わない方が望ましいですね。

②火にかけて煮詰める。

③約1/3ほどまで煮詰めたら火を止めて急冷する。

④フォンドヴォーコルセの完成。
冷蔵で7日ほど保存可能だが、すぐに使用しない場合は冷凍するのが望ましい。

フォンドヴォーコルセについて

コルセ(corser)は『コクを出す』のような意味で、フォンドヴォーを使いやすい濃度まで煮詰めたものをフォンドヴォーコルセといいます。
レストランではフォンドヴォーはソースに使用されることが多く、フォンドヴォーそのままでは濃度も凝縮感も足りないので、あらじめ煮詰めた状態で置いておきます。
ストックの場所も取らずに保存性も向上するので、明確な煮詰めない理由が無い限りはフォンドヴォーコルセの状態にしておいてもいいと思います。

二番出汁をグラス・ド・ヴィヤンドの状態にする

①一番出汁と同様に、二番出汁の表面に固まった脂を取り除いて火にかける。

②水分がほとんど無くなるまで煮詰める。
その際、泡の状態を見て濃度を判断すると良い。

③グラス・ド・ヴィヤンドの完成。
冷やし固め、適当な大きさにカットして冷凍しておくと使いやすい。

フォンドヴォーの作り方についての補足

煮出す肉の焼き色、水分量について

フォンドヴォーの作り方は、オーブンで肉の水分を飛ばしながら焼き色をつける、という点が大事なポイントなのですが、完全に肉の水分をゼロにしたらいいか?といわれるとそういうわけではありません。
完全に水分が無くなるまで焼いた肉で煮出すと、キレのある香ばしい風味は出ますが牛の豊かな香りが失われてしまいます。
なので今回は天板にドリップが出なくなる、というのを目安にしてカラカラになるまでは水分を抜いていません。

また、焼き色についてですが、これも同様に完全に焦げる直前まで焼くと香ばしさは強く出ますが、牛の香りがマスキングされてしまうので、ある程度の所までで留める必要があります。

この水分量や焼き色のコントロールはどのような香りのフォンドヴォーが欲しいかによって正解が変わりますし、肉の部位や状態によっても違うので、一概にこれが正しいやり方である、とは言えません。
なので、一旦はこの作り方を参考にしていただいて、その上で自分が求める味になるように温度や時間を微調整していただくのがいいかと思います。

オーブン天板のデグラッセについて

私は基本的に肉を焼いた天板はデグラッセをしません。
長時間加熱しても焦げないようにクッキングシートを敷いて、その上で肉を時々動かしながら焼いているので都度クッキングシートに少量ついたスュックも肉で絡めとることができているためです。

もちろんそれでもクッキングシートに残るスュックはゼロではありませんが、肉があまり触れていなかった場所は長時間のローストによって焦げが付いている恐れがあります。
苦味の原因となる焦げが入るリスクを負ってまで少量のスュックを入れる必要はないと判断したためデグラッセの工程を省いた、というわけです。

ただ、この考え方はおそらく賛否があると思いますので、ご自身で判断して最適だと思える形をとっていただければと思います。

煮出し時間について

今回の煮出し時間ですが、一番二番共に5時間ほどを目安にしています。
色々なレシピを見ていると一番出汁に関しては8~10時間ほど煮出しているケースが多いのですが、今回のように一番と二番に明確な用途の違いがある場合は、一番は短時間でよりクリアに香りよく仕上げて、取り切れなかった旨味を二番で抽出して凝縮させる方がそれぞれの性質に合った出汁になると考えています。

長時間煮出すと、どうしても肉や野菜が煮崩れて濁りやすくなります。
最悪二番出汁に関しては多少濁っても、グラス・ド・ヴィヤンドの状態にすれば影響は小さくなるのですが、一番出汁はクリアさを活かしたままソースなどに派生させるため、決して濁らせるわけにはいきません。

そういった理由から、私は現在フォンドヴォーの煮出し時間を少し短縮して、クリアな一番出汁と旨味の凝縮した二番出汁を分ける、という方法を選択しています。

トマトを入れない理由

フォンドヴォーを煮出す際にトマトやトマトペーストを入れる方が多いと思うのですが、今回のレシピでは使用していません。
トマトの風味を付けないことでより汎用性のあるクリアなフォンドヴォーにしたかったから、というのが理由です。
トマト風味が欲しいソースを作る時でも、トマトペーストやトマトピュレなどを使えば後からトマトの風味をプラスすることはできますし、煮出す段階で入れる必要はないと判断しました。

味の面以外でもトマトを入れる理由は、トマトに含まれているグルタミン酸ナトリウムによってより旨味をしっかり感じさせるため、というのがあるかと思いますが、グルタミン酸ナトリウムを抽出したいという理由でしたら生ハムの切れ端を一切れ加えるだけで充分だと思いますし、クリアさも保つことが出来ます。

フォンドヴォーの一番出汁と二番出汁の違い

フォンドヴォーはほぼすべての料理人が二番出汁まで取るのですが、ではなぜフォンドヴォーは一番と二番を分けてとるのでしょうか?
一番と二番を合わせた時間、つまり約10時間火にかけていれば同じようなものは作れないのか?といった疑問が浮かんだ方もいるのではないでしょうか。

なのでここからは一番と二番を分けてとる理由と、それぞれの違いについてお話していきます。

フォンドヴォーの一番出汁

フォンドヴォーの一番出汁は骨や肉からのゼラチン質が溶け出して、旨味の余韻も長く香りもしっかりとあります。
なので、その旨味と風味の良さを活かしたソースや煮込みのベースなどによく使用されます。

フォンドヴォーの二番出汁

フォンドヴォーの二番出汁は一番出汁で抽出しきれなかった分のゼラチン質や旨味をとり切るために作ります。
旨味や香りも一番出汁に比べると物足りないのですが、その分クセもないので、しっかり煮詰めることで純粋な旨味の塊として使用することができます。

一番と二番をわけて抽出する理由

前述の通り、一番出汁をとったあとに二番出汁をとる理由は、一番出汁で抽出しきれなかった旨味などを抽出しきるためです。

でも抽出しきれかったのなら抽出しきるまで長い時間煮出せばいいのではないか?
と思われるかもしれませんが、こうしないのは
ある程度旨味の濃度がある液体には素材の旨味が溶け出しにくいから
という理由からです。

真水は旨味の元となるアミノ酸を持っていないので、素材からアミノ酸が溶け出しやすい状態となりますが、しっかり煮出したフォンドヴォーは当然旨味がしっかりとあり、旨味の濃度が濃い状態となっているので素材からアミノ酸が溶け出しづらいのです。

よって一度旨味を持った液体を濾してしまってから、再度真水で煮出した方がより効率的に素材から旨味を抽出できる、というのが一番と二番を分けて抽出する理由となります。

さらにもうひとつのメリットとしては、
性質の違う二種類の出汁が抽出できる
という点も挙げられると思います。

上記の通り、一番出汁はゼラチン質も牛の香りもしっかり持っているので、グラス・ド・ヴィヤンドのように完全に水分が無くなるまで煮詰めて使用するのにあまり向いていません。
ゼラチン質が強すぎてベトベトになりますし、せっかくの香りが飛んでしまいます。
その点、二番出汁はゼラチン質が少ないので、しっかり煮詰めて旨味を凝縮させることができます。

なので香りのあるまろやかなソースが良ければ一番出汁だけで作ってもいいですし、それが物足りなければ煮詰めた二番出汁で旨みを補強する。
そしてゼラチン質や牛の風味があまり必要なければ二番出汁で作ったグラス・ド・ヴィヤンドだけでソースを仕上げたりと、一番と二番を分けることで様々な状態のソースを作り上げることが容易になります。

一番と二番を合わせる場合は

上記のように一番と二番を分けて使用する方が汎用性は高いのですが、店によってはそんなに何種類もソースを作ったりせず、フォンドヴォーの用途が限定されている場合もあります。
そういった場合は汎用性よりも使い勝手の面で、一番と二番を合わせたバランスの良いフォンドヴォーに仕立てます。
基本的な作り方は同じで、それぞれ脂を取り除いた段階で合わせ、お好みの濃度まで煮詰めて使用します。

おわりに

長々とお付き合いいただきありがとうございました。
料理書などでもフォンドヴォーの作り方はよく見かけるのですが、大体は骨と野菜を焼いて何時間煮出して濾すって感じのアバウトな説明ばかりなのでできるだけ詳しく工程を書いてみましたが、いかがだったでしょうか。

ここでは書ききれなかった理論的に部分に関しましては、以前書いた記事の『プロ向けフォン・ド・ヴォライユのレシピ』をご覧いただければと思います。↓

【前編】プロの為のフォン・ド・ヴォライユ講座

26/08/2017

【後編】プロの為のフォン・ド・ヴォライユ講座

30/08/2017

あとこちらの記事にも出汁の抽出についての理論をちらっと書いてあります。↓

ウォーターバスを使ったブイヨンの抽出方法

25/01/2019

本記事とこのフォンドヴォライユの記事を合わせて読んで頂ければ、フランス料理のフォンについてより理解を深めていただけるのではないかと思います。
ぜひ参考にしてみてください。

それでは本日もお読みいただきありがとうございました。
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